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医療情報

インフルエンザウイルスの怖さ!(2019.12.12更新)

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で起こります。インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類が知られていますが、人の間で流行するのは主にA型とB型です。
A型は、特に遺伝子変異が起こりやすく、人に抗体ができても、少しずつ変異して、新たな感染源となって毎年流行を繰り返します。
また、インフルエンザウイルスの活動性が高まるのは、一般的に湿度と気温の低い冬の季節です。

通常、人の気道(鼻から喉、気管支などの空気の通り道)には、空気と一緒に入ってきた小さなゴミや細菌、ウイルスなどの異物を粘液で包み込み、外へ送り出す働きがありますが、乾燥した冷たい空気はこの働きを低下させるためです。

鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係

最近、「鳥インフルエンザ」から人に感染性を持つ「新型インフルエンザ」の出現が危惧されています。
02もともとインフルエンザウイルスは、カモなどの水鳥の腸に共生していました。カモが渡りの途中で、アヒルやニワトリなどと接触するうちにインフルエンザウイルスが伝わり、さらに豚に感染し、豚の鼻の粘膜でいろいろなタイプのインフルエンザウイルスが 「遺伝子再集合」※ を起こして人に感染するものが生まれると考えられています。
鳥インフルエンザは、本来ニワトリなどの鳥同士が感染するものですが、直接人に感染する例も見つかっています。強い病原性をもった鳥インフルエンザウイルスが遺伝子再集合により人に感染しやすいタイプに変化すると、今までにないインフルエンザウイルスが出現することになります。

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このような新型インフルエンザウイルスに対する対策は、日本だけでなく世界規模で考える必要があります。
※遺伝子再集合: 同じウイルスでも遺伝子の違うものが集まり、それまでにみられなかった新しい遺伝子の組み合わせが生まれること。

インフルエンザの症状

04インフルエンザの症状は、風邪と似ています。しかし、喉の痛みや鼻汁、くしゃみ、咳といった風邪の症状に加えて、38~40度の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの強い全身症状を伴うのがインフルエンザの特徴です。
感染してから発症するまでの間には、1~5日程度の潜伏期間があると考えられています。症状は、健康な成人であれば通常3~7日間続き、その後、治癒に向かいます。

重症化させないために

インフルエンザの症状は、免疫機構の働きが正常であれば1週間程度で治りますが、呼吸器、心臓などに慢性の病気を持つ人や高齢者では重症化しやすく、最悪の場合は死に至ることもあります。
インフルエンザが重症化すると、気管支炎や肺炎を併発します。小児では、「中耳炎」や「熱性けいれん」、そして非常に危険な状態ともいえる「急性脳症」などに至る可能性も高くなります。
『風邪かな?』と自己判断せずに、早いうちに医師にかかることが重症化させないコツです。
また、インフルエンザワクチンを接種しておくことも重症化を防ぐ上で有効です。

ウイルスと免疫機構との闘いが症状に!?

インフルエンザウイルスは、気道の正常な細胞の遺伝子に自己の遺伝子を送り込み、増殖します。一方、人の体には免疫機構があり、ウイルスの増殖をいち早く察知し、免疫機構がウイルスの増殖を抑制しようとウイルス対免疫機構の闘いが始まります。
この闘いが、高熱と関節痛、全身倦怠感などのインフルエンザに特徴的な症状となって現れると考えられています。
 また、 ウイルスにとって高熱は苦手な環境なので、むやみに解熱薬を使って熱を下げるのはよくないといわれています。

検査

インフルエンザの検査は、迅速診断キットで行われるようになってきました。これは、喉あるいは鼻の粘液を綿棒で取って調べる簡便な検査です。
また、血液を採取してインフルエンザウイルスに対する抗体の有無や量を調べることもあります。

30分で診断!?

インフルエンザは、流行する時期が決まっていることや特徴的な症状から問診などで診断は容易です。
現在は、迅速診断キットによって30分以内に正確な診断ができます。

治療

一般療法

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  • できるだけ安静にし、栄養と十分な睡眠を取ります。
  • インフルエンザウイルスの空気中での活動や感染を抑えるために、加湿器などで室内の湿度を50~60%に保ちます。
  • 水分を十分に補います。お茶、スープ、ジュースなど何でもいいので飲みたいものを飲みます。

対症療法

発熱や関節痛などに対しては解熱鎮痛薬、鼻水やくしゃみに抗ヒスタミン薬などが用いられます。一方、インフルエンザの症状はインフルエンザウイルスに対して免疫が正常に働いている結果であり、薬で無理に抑えないほうがよいという考え方もあります。市販の薬を自己判断で使用することは、却って逆効果になる場合があるので、医師の指示にしたがってください。

避けたほうがよい解熱薬

インフルエンザに対して避けたほうがよい解熱薬があります。アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸がその代表的なものです。市販の解熱薬の中には、これらが含まれている製品があります。特に、小児では重い副作用が起こることがあるので、自己判断を避け、必ず医師に相談してください。

抗ウイルス療法

インフルエンザウイルスに対する治療薬として、塩酸アマンタジンとノイラミニダーゼ阻害薬があります。塩酸アマンタジンはA型インフルエンザウイルスに有効で耐性が起こりやすいのですが、ノイラミニダーゼ阻害薬はA型、B型どちらのインフルエンザウイルスにも有効です。但し、これらの抗ウイルス薬は 発病後48時間以内に服用 しないと効果がありません。
また、現在日本ではノイラミニダーゼ阻害薬のリン酸オセルタミビルと塩酸アマンタジンを予防薬として使用することができますが、13歳以上に限るという制限など、いくつかの条件があるので医療機関に相談してください。

インフルエンザにかからないためにできること

インフルエンザが流行しているとき

  • 人ごみを避ける。
  • 外出時にはマスクをつける。
  • 外出から帰ったらうがい、手洗い、洗顔を行う。
  • 栄養バランスのよい食事を摂る。
  • 疲れをためず、休養および十分な睡眠をとる。

インフルエンザワクチン接種を受ける

インフルエンザワクチン接種を受けたからといって感染を100%防ぐことはできませんが、健康な成人では70~90%くらい発病を阻止するといわれます。

接種時期 11月頃
接種回数 ・ 原則として1~4週間の間隔をおいて2回
・ 65歳以上/昨年予防接種を受けている/近年インフルエンザにかかった人は1回でよいとされますが、最終的には医師が判断します
費用 自己負担で、1回/約3000~5000円
※接種について ・ 明らかな鶏卵・鶏肉アレルギーを持つ人はワクチン接種ができません
・ 妊婦または妊娠の可能性のある人は医師に相談することをすすめます
・ 高熱があるなど体調が悪いときはワクチン接種を避けます

インフルエンザの予防接種を実施している医院

秋から冬にかけて大流行が予想されるインフルエンザですが、ワクチンを打つことでたとえ発症したとしても軽い症状で済むといわれています。提携サイトであるEPARKクリニック・病院では、全国でインフルエンザワクチン接種を受け付けている医療機関を掲載しております。

インフルエンザの予防接種を実施しているクリニック・医院の一覧

インフルエンザ予防接種 EPARK クリニック・病院補助について

インフルエンザの予防接種をお考えの方にEPARKクリニック・病院では補助を実施しております。 詳しくは「インフルエンザ予防接種 EPARK クリニック・病院補助対象について」をご確認ください。

新型インフルエンザへの対応は?(2019.12.12更新)


監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

新型インフルエンザとは?

01インフルエンザとはウイルスによる感染症のひとつで、A型・B型・C型の大きく3つに分かれます。なかでもA型はウイルスの大きな変異をきたすため、世界的大流行(パンデミック)を起こすといわれています。
通常、12~3月に流行しているインフルエンザを「季節性インフルエンザ」といいます。季節性インフルエンザは、主にA型とB型のウイルスによって引き起こされます。
一方、ウイルスが変異して、新たに人への感染能力をもち、さらに人から人へと感染するようになったインフルエンザを「新型インフルエンザ」といいます。主に、変異したA型ウイルスによって引き起こされ、流行がおさまると季節性インフルエンザのひとつになっていく傾向にあります。
現在、世界的大流行を起こしている新型インフルエンザは、2009年4月、メキシコにおいて、初めて発生が確認されました。豚から人に感染し、やがて人から人へと広まったとの説から、発生当初は「豚インフルエンザ」とも呼ばれていました。現在では「パンデミック(H1N1)2009」という正式名称がつけられています。
新型インフルエンザは、ほとんどの人がウイルスに対する免疫をもっていないため、誰もが感染する可能性のある病気です。しかし季節性インフルエンザとの共通点も多く、ワクチンで感染を未然に防いだり、早期に適切な治療を受けることにより重症化を防いだりすることも可能です。
大流行しているからといって慌てず、正しい知識を身に付けて、冷静な対応がとれるよう心掛けましょう。また、感染が疑われる場合には、早めに医師に電話で相談しましょう。

感染経路は?

感染経路には飛沫感染と接触感染があります。前者は、感染者の咳やくしゃみから放出されたウイルスを吸い込んで起こる感染をいい、後者は、ウイルスが付着したものに触れた手で眼や鼻、口などにさわり、その粘膜からウイルスが侵入して起こる感染をいいます。

症状は?

季節性インフルエンザとほぼ同様で、38℃以上の発熱、鼻汁や鼻詰まり、喉の痛みや咳などがみられます。小児ではインフルエンザ脳症(※)が見受けられる場合もあります。今回の新型インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて感染力が強いといわれていますが、軽症のまま回復することが多いようです。また、ウイルスの潜伏期間は1~7日間といわれています。
次に該当する場合は、肺炎を併発するなど重症化しやすいといわれているため、特に注意する必要があります。

新型インフルエンザが重症化しやすい場合
  • 乳幼児
  • 妊婦
  • 高齢者
  • 慢性呼吸器疾患(気管支喘息、慢性気管支炎など)のある人
  • 慢性心疾患(うっ血性心不全など)のある人
  • 代謝性疾患(糖尿病など)のある人
  • 腎機能障害(慢性腎不全など)のある人
  • 免疫が低下している人(ステロイドの全身投与を受けているなど)

※ インフルエンザ脳症・・・5歳以下での発症が多い。ウイルス感染による発熱後に、痙攣(けいれん)や意識障害、異常行動などがみられる

検査と診断

02まず、問診を行います。問診では、発熱の有無や症状の現れた時期などについて質問されます。また、迅速診断キット(※1)により診断する場合もあります。より詳しくは、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction/逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)(※2)による検査もありますが、一般的にはほとんど行われません。
現在では、原則としてすべての一般医療機関を受診することが可能です。しかし、産科、透析またはがん専門の病院など、新型インフルエンザの診療を行わない医療機関もあるため、まずはかかりつけ医に電話で相談しましょう。特に、妊産婦や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患をもつ患者さんは、事前にかかりつけ医と相談して、感染の疑いがある場合の受診機関を決めておきましょう。かかりつけ医をもたない場合には、一般医療機関に電話し、受診の可否を確認しましょう。そのほか、各都道府県の保健所などに設置されている発熱相談センターでも、電話による情報提供を行っています。感染拡大につながる恐れもあるため、事前に連絡をせず受診するのは禁物です。また、感染が疑われる場合には、待合室や入り口、診療時間がほかの患者さんと異なることもあるため、受診前に必ず確認しましょう。さらに、受診の際には不織布製のマスクを着用し、電車やバスなどの公共機関の利用をできるだけ避けましょう。
※1 迅速診断キット・・・細いめん棒や吸引器を使用して鼻や喉から粘膜を採取し、ウイルス感染の有無を調べる
※2 RT-PCR・・・特定の遺伝子を増幅して検出し、感染したウイルスの種類を調べる検査

治療法は?

主に、抗インフルエンザウイルス薬を用いた薬物療法を行います。そのなかでも、ノイラミニダーゼ(※1)の働きを阻害するザナミビル水和物とオセルタミビルリン酸塩を使用します。どちらも発症してから2日(48時間)以内に投与を開始する必要があります。それ以上経過した場合には、投与しても十分な効果は期待できないため、解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬などを用いる対症療法が中心となります。
では、抗インフルエンザウイルス薬の概要についてみていきましょう。

抗インフルエンザウイルス薬の概要
薬剤名 ザナミビル水和物 オセルタミビルリン酸塩
剤形 吸入薬 経口薬
主な副作用 下痢、発疹、吐き気、アナフィラキシーショック(※2)、呼吸困難、気管支痙攣 腹痛、下痢、吐き気、アナフィラキシーショック、肺炎、慢性腎不全
主な注意点 慢性呼吸器疾患をもつ場合は、気管支痙攣の起こる恐れがあるため、医師に相談すること
慢性呼吸器疾患の薬を併用する場合は、ザナミビル水和物の前に使用すること
10歳以上の未成年での使用は、原則として差し控えること
高度の腎機能障害をもつ場合は、腎機能低下の恐れがあるため、医師に相談すること
感染予防に
用いる場合
感染者に接触してから1.5日以内に使用を開始すること 感染者に接触してから2日以内に使用を開始すること

抗インフルエンザウイルス薬を感染予防に用いる場合もありますが、保険適用外であり、ワクチンによる予防接種に置き換わるものではありません。さらに、使用し続けなければ予防効果の持続は期待できません。
また、抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は十分には明らかにされていませんが、小児や未成年者の使用後に異常行動がみられたとの報告もあります。そのため、小児や未成年者の使用後には一人にさせないなど、患者さんの行動に注意する必要があります。そのほか、乳幼児や妊産婦、妊娠している可能性のある場合は、受診時に医師に相談しましょう。また、抗インフルエンザウイルス薬を使用している期間は、授乳を避ける必要があります。
体調がよくなったからといって自己判断で薬の使用を中止すると、症状の悪化を招く恐れもあります。医師の指示通りに使用することが大切です。
※1 ノイラミニダーゼ・・・ウイルスの増殖に関与する物質
※2 アナフィラキシーショック・・・アレルギーの原因となる物質が体内に入って、呼吸困難や血圧低下などのショック症状が現れた状態。重症になると死亡する場合もある

日常生活における感染予防法

まずは、感染予防が重要です。日常生活において次の点に気をつけて、感染予防を心掛けましょう。

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  • 外出先から帰ったら手洗い、うがいを
    外出先から帰ったら、手洗いやうがいを行いましょう。石鹸を使用し、指の間や手首などに洗い残しのないよう、念入りに手を洗いましょう。消毒用アルコールの使用も有効です。
  • 人込みをなるべく避けて
    人込みをなるべく避けましょう。やむをえず、人込みに入る場合には、不織布製の使い捨てマスクを着用しましょう。また、マスクの着用だけではウイルスを完全に防ぐことはできないため、ほかの感染予防法も継続して行いましょう。

自分や家族が感染したら

新型インフルエンザに感染した場合、原則として重症の患者さん以外は自宅療養をすることになります。自分や同居している家族が感染したら、次の点に注意して感染拡大を防ぎましょう。

  • できるだけ外出を控えて
    できるだけ外出を控えて自宅で安静に療養しましょう。療養中は、十分に水分補給をすることが大切です。熱が下がったとしても、感染力は残っている場合もあります。熱が下がってから少なくとも2日以上経過するまで、また発熱や咳などの症状が現れた翌日から少なくとも7日以上経過するまでは、外出するのを控えましょう。
  • くしゃみや咳をする時にはエチケットを守って
    やむをえず外出する場合には、不織布製の使い捨てマスクを必ず着用しましょう。くしゃみや咳をする時は、周囲の人から顔をそむけて1メートル以上離れ、ティッシュなどで口や鼻を覆いましょう(これを咳エチケットといいます)。使用したティッシュは、すぐにふた付きのごみ箱に捨て、手をよく洗いましょう。 
  • 看護をする際にも感染予防を
    患者さんの看護はできるだけ個室で行い、同居している家族が感染するのを防ぎましょう。看護をする際には不織布製の使い捨てマスクを着用し、手洗いやうがいを心掛けましょう。また、看護をする側も毎日検温し、体調管理を行うことが大切です。
注意

上記の内容は、すべて2009年9月30日現在の情報をもとに作成しております。最新情報は、下記の情報サイトなどで必ずご確認ください。
厚生労働省の情報サイト:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
新型インフルエンザの情報サイト:
http://influenza.jp/newflu/index.html

季節性インフルエンザにご用心!(2019.12.12更新)

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

季節性インフルエンザとは?

01通常の風邪と季節性インフルエンザは、どちらもウイルスによる感染症のひとつですが、原因となるウイルスや症状などに違いがあり、治療法も異なります。
季節性インフルエンザは、例年12~3月ごろにかけて流行します。いったん流行し始めると短期間で蔓延し、年齢や性別にかかわらず多くの人が感染してしまいます。季節性インフルエンザのウイルスはA型、B型、C型の大きく3つに分かれます。このうち流行を引き起こすのは、主にA型とB型です。なかでもA型はウイルスが頻繁に変異するため、大流行を引き起こすといわれています。
季節性インフルエンザは、早期の治療により重症化や合併症を防ぐことも可能です。また、ワクチンを接種することにより、ウイルスに感染しにくくしたり、感染した場合の重症化や合併症を防いだりする効果が期待できます。早めに医療機関を受診し、早期の治療や感染予防を心掛けましょう。

感染経路は?

主に、感染者の咳やくしゃみなどから放出されるウイルスを吸い込むことによって感染します(飛沫感染)。また、ウイルスが付着したものに触れた手で眼や鼻、口などの粘膜にさわり、そこからウイルスが侵入して感染する場合もあります(接触感染)。

症状は?

主な症状には、38℃以上の高熱、頭痛、喉の痛みや咳、鼻水や鼻詰まりなどがあります。通常の風邪とは異なって、症状が急激に悪化したり、関節痛や筋肉痛などの全身症状を強く感じたりするのも特徴です。また、ウイルスの潜伏期間は1~5日間といわれています。
季節性インフルエンザが重症化すると、肺炎やインフルエンザ脳症(※)などを合併する恐れもあります。特に、高齢者や妊婦、乳幼児、慢性疾患のある患者さんや免疫機能が低下している患者さんなどは、重症化しやすいといわれているため、十分に注意する必要があります。
※ インフルエンザ脳症・・・ウイルス感染による発熱後に、痙攣(けいれん)や意識障害、異常行動などがみられる。特に5歳以下での発症が多い。

検査と診断

まずは、問診を行います。症状からおおよそ診断はつきますが、迅速診断キットを使用して、細いめん棒や吸引器で鼻や喉から粘膜を摂取し、ウイルス感染の有無を確認する場合もあります。

治療法は?

抗インフルエンザウイルス薬を用いた薬物療法が中心となります。抗インフルエンザウイルス薬には、ザナミビル水和物とオセルタミビルリン酸塩(※1)、アマンタジン塩酸塩があります。これらは、発症してから2日(48時間)以内に投与を開始する必要があります。それ以上経過した場合には、対症療法として解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬などを使用します。解熱鎮痛薬の中には、15歳未満での使用を避けた方がよい薬もあるため、医師や薬剤師によく相談した上で使用しましょう。

抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は十分に解明されてはいないものの、小児や未成年者の使用後に異常行動がみられたとの報告もあります。ご家族や周囲の方は、小児や未成年者の使用後には一人にさせないなど、患者さんの行動に注意しましょう。
また、抗インフルエンザウイルス薬と飲みあわせの悪い薬もあるため、現在かかっている病気や使用している薬のある場合には、必ず医師に伝えましょう。そのほか、乳幼児や小児、妊婦や妊娠している可能性のある場合にも、医師に相談する必要があります。
抗インフルエンザウイルス薬の概要は次の通りです。

抗インフルエンザウイルス薬の概要
薬剤名 ザナミビル水和物 オセルタミビルリン酸塩 アマンタジン塩酸塩
剤形 吸入薬 経口薬 経口薬
適応する
ウイルス
A型、B型 A型、B型 A型
主な
副作用
下痢、発疹、吐き気、アナフィラキシーショック(※2)、呼吸困難、気管支痙攣 など 腹痛、下痢、吐き気、アナフィラキシーショック、肺炎、慢性腎不全など 吐き気、ふらつき、幻覚、不眠、腎機能障害、心不全 など

※1 抗インフルエンザウイルス薬との因果関係は明らかではないが、この薬の服用後に異常行動がみられたとの報告もある。そのため、10歳以上の未成年での使用は、原則として差し控えることとされている(2007年3月20日 厚生労働省通達)
※2 アナフィラキシーショック・・・体内にアレルギーの原因となる物質が入り、呼吸困難や血圧低下などが現れた状態。重症になると死亡する場合もある

ワクチンの予防接種とは?

02残念ながら、ウイルスの感染を完全に防ぐことはできません。しかし、ワクチンを接種することにより、季節性インフルエンザにかかりにくくしたり、重症化や合併症を防いだりすることも可能です。
ワクチンの接種回数は、1回または2回の場合があります。65歳以上の高齢者、前年にワクチンの接種を受けている方、近年に季節性インフルエンザにかかったことのある13歳以上64歳以下の方は、1回の接種で十分な効果があるといわれています。2回接種する場合には、1回目から1~4週間後に2回目を接種します。個人差はありますが、ワクチンの効果は接種してから2週間ほどで現れ、約5カ月間持続するといわれています。季節性インフルエンザの流行は12~3月ごろのため、流行前に接種するのがよいでしょう。 
また、体調の変化をもたらす恐れもあるため、接種当日の激しい運動や大量の飲酒は控えましょう。入浴に関しては、ワクチンの接種から1時間を経過していれば、問題はありません。
ワクチンの接種は一般医療機関で受けることができますが、保険適用外のため全額自己負担となります。しかし、次に該当する場合は、予防接種法により定期予防接種の対象に定められており、自己負担額が軽減される場合もあります。地域によって接種可能な期間や費用が異なるため、詳しくは、かかりつけ医やお近くの保健所にお問い合わせください。

定期予防接種の対象者
  •  65歳以上の高齢者
  • 60歳以上64歳以下で、心臓や腎臓、呼吸器などに慢性疾患のある方
  • 60歳以上64歳以下で、免疫機能が低下している方

ワクチンの副反応は?

使用されるワクチンは、病原性を含まない不活化ワクチンのため、安全性が高いといわれています。しかし、接種当日の体調や体質などによって、さまざまな身体的反応が現れる場合もあります。これを「副反応」といいます。
副反応には、接種した部位の発疹や痛み、発熱や倦怠感などが挙げられます。いずれも軽いものが多く、2~3日で消失します。また、じんましんや痒みなどのアレルギー反応が、数日間にわたって現れる場合もあります。ワクチンとの因果関係は明らかではありませんが、まれに痙攣やアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が現れる場合もあります。受診の際には、いままでにかかったことのある病気や接種当日の体調、体質などを的確に医師に伝えましょう。また、ワクチンの接種を受けられない場合もあります。

医師に相談する必要のある場合
  • 心臓や腎臓、肝臓などに慢性疾患のある方
  • 痙攣の症状が現れたことのある方
  • 鶏卵や鶏肉などに対してアレルギーを起こす可能性のある方
  • 妊婦、妊娠している可能性のある方  など
ワクチンの接種を受けられない場合
  • 接種当日に37.5℃以上の発熱のある方
  • ワクチンを接種した際、アナフィラキシーショックなどが現れた経験のある方
  • 重篤な急性疾患にかかっている方  など

自宅療養における注意点

季節性インフルエンザにかかって適切な治療を受けた後は、自宅で安静に療養しましょう。自宅療養における注意点は次の通りです。

  • 水分補給と十分な睡眠を
    高熱により脱水症状に陥る場合もあるため、スポーツドリンクなどで水分と電解質(※)を補給しましょう。また、睡眠を十分にとって、身体を休ませることも大切です。
    ※電解質…体液のバランスを整える物質
  • できるだけ外出を控えて
    周囲への感染を防ぐために、熱が下がってから少なくとも2日以上経過するまでは、外出するのを控えましょう。やむをえず外出する場合には、必ず不織布製のマスクを着用し、咳エチケット(※)を守りましょう。
    ※ 咳エチケット…咳やくしゃみをする際には、ティッシュなどで口や鼻を覆い、周囲の人から顔をそむけて1メートル以上離れること

日常生活における注意点

日常生活において次の点に気をつけて、季節性インフルエンザの感染予防を心掛けましょう。

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  • 手洗い、うがいの習慣を
    外出先から帰ったら、手洗いやうがいを行いましょう。消毒用アルコールを使用するのも有効です。また、うがいは喉の粘膜を清潔に保つだけではなく、乾燥を防ぐ効果も期待できます。
  • 人込みでは不織布製のマスクを着用して
    人込みに入る場合には、不織布製のマスクを着用しましょう。それだけでは完全にウイルスを防ぐことはできないため、ほかの感染予防法も継続して行うことが大切です。
  • 栄養バランスのよい食事を
    栄養バランスのよい食事を心掛け、ウイルスに対する抵抗力を身につけましょう。特に、ビタミンCは免疫力を高める効果があるといわれているため、積極的に摂取するよう心掛けましょう。
  • 部屋の湿度を50~60%に保って
    乾燥した環境ではウイルスが増殖しやすいといわれています。また、乾燥は喉や鼻の粘膜の防御機能を低下させます。加湿器などを使用して、部屋の湿度を50~60%に保つよう心掛けましょう。

季節性インフルエンザの情報は下記サイトでもご確認いただけます。
国立感染症研究所 感染症情報センター:
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
季節性インフルエンザの情報サイト:
http://influenza.jp/flu/index.html

B型慢性肝炎と肝臓の不思議な能力(2019.12.12更新)

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


日本では母子感染が多い

im_001慢性肝炎は肝臓の炎症が6ヵ月以上続く病気で、多くの場合はウイルスが原因となります。現在、肝炎ウイルスはA型、B型、C型、D型、E型の5種類がわかっています。
B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染が原因で起こります。主な感染は血液感染などが知られていますが、日本では母子感染といって、B型肝炎ウイルスを持っているキャリアの母親から子供に感染することが多いと考えられています。
母子感染の有無は、母親の血液検査で調べます。もし、B型肝炎ウイルスが陽性であればB型肝炎ワクチンを赤ちゃんに注射することで治療ができます。初回接種は生まれて2~3ヵ月後で合計3回行います。

赤ちゃんは、免疫力が未発達のため、ウイルスに感染してもウイルスに対する防御機構が十分に働きません。しかし成長と共に免疫力が発達するとウイルスを排除しようとするため、「免疫」対「ウイルス」の戦いが始まります。この戦いが「炎症」となります。

無症候性キャリアとは

炎症が現れていない時期を、症状はみられないけどウイルスは持っているという意味で「無症候性キャリア」といいます。無症候性キャリアは、B型肝炎ウイルスによる炎症が起こっても自覚症状のないまま経過し、多くの場合は治ります。
一方、成長しても免疫の防御機構が十分に働かない場合は、ウイルスが排除されずに炎症が続いて「慢性肝炎」となってしまいます。

「ウイルス」VS「免疫」

im_002慢性肝炎は、肝臓を舞台とした「B型肝炎ウイルス」と「免疫の防御機構」との戦いを意味します。免疫の防御機構は、ウイルスが侵入した肝細胞をみつけると異物と考えて細胞ごと破壊してしまいます。この結果、肝細胞中の成分が血液中に流出するので、血液検査から肝炎の進行の程度を知ることができます。

症状は

B型慢性肝炎ではほとんどの場合、自覚症状はみられません。ただし、肝炎が急激に悪化すると、疲れやすい、だるい、食欲がない、尿が黒褐色のような色になるといった症状が現れることがあります。
一方、症状が現れていないからといって治療を行わずに長期間放置すると肝硬変や肝癌に進行してしまうことがあります。

自覚症状が少ない理由

肝臓の病気には、自覚症状が少ないという共通した特徴があります。特に肝炎の場合、気がつかないうちにウイルスに感染し、炎症による肝細胞の破壊が進行し、症状が現れたときには肝硬変になっていたということもあります。

im_002自覚症状が現れにくい理由の1つは、肝細胞の一部が壊れても残りの部分でカバーする、肝臓の予備能という能力が非常に高いためです。肝臓は、全体の7分の6が働かなくなった場合でも残りの7分の1で、それ以前と同じ働きができるのです。
2つめは、再生能力が非常に高いことです。
肝臓は、その4分の3を切り取っても、約4ヵ月後には元の大きさに戻ることができます。ウイルスとともに壊された肝細胞もただちに再生されますが、炎症が何年間も続くと、この再生能力でもカバーできなくなり、最終的には異常な組織の増加により、重い肝臓の障害が起こってしまいます。
したがって、予備能力が十分に残っていて炎症が進行していないうちに、できるだけ早く、この病気をみつけて対策を立てなければなりません。

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検査

B型肝炎ウイルスの血液検査では、過去の感染歴や現在のウイルス感染の有無、ウイルスの量、ウイルスの活動性などがわかります。
また、肝機能検査では、血液中のALT(GPT)、AST(GOT)、血小板数、アルブミンなどを測定し、肝臓の働きに異常がないかどうかを調べます。
腹部エコー検査では肝臓の状態を観察します。
肝臓の組織を少しだけ取り出して顕微鏡で調べる肝組織検査を行う場合もあります。

診断

診断は、ウイルス検査と肝機能検査を組み合わせて行います。
ウイルス検査が陽性で、肝機能の異常を示すALT値の変動が6ヵ月以上続くと「B型慢性肝炎」と診断されます。
ウイルス検査が陽性でも、ALT値の正常が長く続けば「無症候性のキャリア」として定期的に検査を受ける必要があります。

3つの治療目標

  1. B型肝炎ウイルスの増殖を抑える
  2. 炎症の進行を抑えて肝硬変への移行をとめる
  3. 肝癌の発症を防ぐ

主な治療薬

<抗ウイルス薬>
インターフェロン、
ラミブジン、
アデホビル、
エンテカビル
<免疫調整薬>
ステロイド(プレドニゾロン)、
プロパゲルマニウム
<肝庇護剤>
グリチルリチン製剤
(強力ネオミノファーゲンシーなど)、
ウルソデオキシコール酸
<その他>
小柴胡湯(しょうさいことう)、
B型肝炎ワクチン

原因療法

原因療法は、肝臓からB型肝炎ウイルスを完全に排除することを目指した治療で、抗ウイルス薬のインターフェロンやラミブジンなどが使われます。

対症療法

肝炎ウイルスに対する直接的な効果はありませんが、炎症を抑えて肝硬変への進行を遅らせる治療法です。肝庇護療法とも言い、グリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸が使われます。

B型慢性肝炎の検査を受けたほうがよい人

次の項目が当てはまる人は、B型肝炎ウイルスの検査を受けたほうがよいとされています。
検査は市町村の検診を利用できます。最寄りの保険所や医療機関、または行政機関の窓口に相談してください。

  1. 1992年以前に輸血を受けた人
  2. 長期にわたって血液透析を受けている人
  3. 血液製剤を投与された人
  4. 肝炎ウイルス感染ないし、キャリアの母親から生まれた子供
  5. 大きな手術を受けた人
  6. 入れ墨、はり治療、ボディピアスを受けた人

夏のトラブル大特集!(2019.12.12更新)

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授



夏にはさまざまなトラブルが!

01海水浴やキャンプなど、夏は楽しいレジャーが盛りだくさん。ギラギラと照らす太陽の下で思いっきり楽しみたいところですが、夏には熱中症日焼け虫刺されなど健康に関するトラブルも少なくありません。その症状はよく見受けられるため軽くみられがちですが、そのまま放っておくと重症化し、医療機関での治療が必要となることもあります。
予防法や適切な応急処置を身に付けることも大切ですが、症状を軽視した自己判断は禁物です。気になる症状がみられる場合には速やかに医療機関を受診しましょう。

熱中症とは?

スポーツ時や高温の環境下で、体温がうまく調節できなくなって起こる身体的な障害を熱中症といいます。その発症年齢は、乳幼児から高齢者までと幅広く、なかでも高温多湿である夏に発症率が高いです。

症状と原因は?

熱中症は、スポーツ時や高温の環境下において体温調節機能に支障をきたし、体熱の放散がうまくできなくなったために起こります。気温や湿度、風通しの良し悪しはもちろん、その日の体調や生活習慣なども深いかかわりがあります。また、高齢者や乳幼児は体温調節機能の働きが弱いため、発症しやすい傾向にあります。そのほか、皮下脂肪が多いと体熱の放散に支障をきたすため、肥満の方も注意する必要があります。
熱中症は、熱失神・熱痙攣(ねつけいれん)・熱疲労・熱射病の4つに分かれます。また、比較的軽症である熱失神や熱痙攣はI度、中程度である熱疲労はII度、重症である熱射病はIII度というように、症状の程度によって位置付けられています。

熱失神(I度)
症状 顔面蒼白、頻脈、めまい、数秒間の失神、呼吸数の増加
病態 血管が広がって血圧が低下し、脳への血流が減少している状態
熱痙攣(I度)
症状 多量発汗、吐き気、口渇、痛みを伴う痙攣(腹部、手足)など
病態 多量の発汗に伴って、筋肉の収縮に必要な血液中の塩分が不足した状態
熱疲労(II度)
症状 めまい、疲労感、虚脱感、頭痛、失神、吐き気、血圧低下、多量発汗、高体温(40℃以下) など
病態 多量発汗による体重比2%以上の脱水や、血液中の塩分などが不足した状態
熱射病(III度)
症状 熱失神、熱痙攣、熱疲労の症状全般、臓器の機能障害、意識障害、過呼吸、体温調節機能の障害による高体温(40℃以上) など
病態 熱失神、熱痙攣、熱疲労の病態がより進行した状態

応急処置は?

02まずは直射日光を避け、風通しのよい場所で休ませましょう。衣服をゆるめ、足を高くして仰向けの状態で寝かせます。手足の先から身体の中心に向かって、マッサージをするのもよいでしょう。
次に体温を確認しつつ、アイスパックなどを首や腋の下、足の付け根にあてがって身体を冷やします。直接皮膚にあてがうと、局所的に冷えすぎて身体の内部まで冷やされないこともあるため、冷やす部位をタオルなどで覆いましょう。身体に水分を吹きかけ、うちわであおいで冷やすのも効果的です。また、吐き気がなければ少しずつ水分を補給しましょう。真水を補給すると血液中の塩分濃度が低下し、自発的脱水現象(※1)を起こす恐れもあります。スポーツドリンクなどで水分と電解質(※2)を同時に補給するよう心掛けましょう。
これらの応急処置を行っても回復しない場合や、意識障害があるなど熱射病(III度)の場合には、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。嘔吐する可能性もあるため、横向きに寝かせ、嘔吐物を誤って飲み込んで気道(※3)がふさがれるのを防ぎましょう。また、熱疲労(II度)の場合でも医療機関を受診させた方がよいでしょう。

※1 自発的脱水現象・・・血液中の塩分濃度低下を防ぐために、身体が水分を受け付けなくなってしまう現象
※2 電解質・・・ナトリウムやカリウムなど、体液のバランスを整える働きをもつ物質
※3 気道・・・空気の通り道

予防法は?

熱中症には、次のような予防法が効果的です。特に、スポーツ時や高温の環境下では十分に注意し、発症を防ぐよう心掛けましょう。

  • 冷房を上手に使用して
    室内でも高温多湿なこともあるため、冷房を上手に使用して発症を防ぎましょう。しかし、冷房の効きすぎは、身体の体温調節機能の低下を招く恐れもあるため、設定温度などにも注意しましょう。
  • 高温下での外出はできるだけ控えて
    高温下での外出は、できるだけ控えましょう。外出する場合には、なるべく軽装を心掛け、直射日光を防ぐために帽子を必ず着用しましょう。熱吸収率の低い薄い色の服装もお勧めです。
  • こまめな水分補給を
    軽い脱水症状を起こしている場合は、のどの渇きを感じにくいこともあります。口渇感の有無にかかわらず、電解質を含んだ水分をこまめに補給するよう心掛けましょう。

日焼け(日光皮膚炎)とは?

皮膚が紫外線を浴びて起こる熱傷を日焼け(日光皮膚炎)といいます。日焼けは4~9月にかけてよく見受けられます。特に夏は紫外線が強いため、発症率が高いです。
紫外線は、太陽光の一部で、波長によってA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)に分かれます。なかでもB波は有害であり、人体に悪影響を及ぼすといわれています。一日のうちでは、正午前後(午前10時~午後2時)に強く降り注ぎます。

症状と原因は?

日焼けの症状は、サンバーンとサンタンの大きく2つに分かれます。
紫外線の影響により、皮膚が赤くなってヒリヒリするなどの炎症を起こした状態をサンバーンといいます。多くの場合、症状は2~3日で治まりますが、重症になると水泡やむくみなどもみられます。また、乾いた皮膚がはがれ落ちることもあり、患部はその後数週間にわたって日焼けしやすい状態にあります。
サンバーンが現れた後、時間の経過とともに皮膚が褐色に変化します。これは、皮膚の色素細胞(メラノサイト)(※)が紫外線によって刺激され、メラニン色素を発生させたために起こる症状で、サンタンといいます。メラニン色素は、紫外線を吸収する働きをもち、皮膚組織のDNAが傷ついて皮膚がんに進行するのを防ぎます。また、乳幼児や肌の白い人はメラニン色素が少ないため、紫外線の影響を受けやすいといわれています。
日焼けは、長期的にみると皮膚の老化や発がんの原因にもなります。短期的にみると、重症の場合には発熱や悪寒、脱力などの症状が現れることもあります。
※ 色素細胞(メラノサイト)・・・皮膚の最下層にある細胞で、紫外線を浴びるとメラニン色素を発生させる

応急処置と治療法は?

日焼けをしてしまったら、早めの治療が肝心です。まずは、水を含ませたタオルなどで患部を冷やしましょう。熱が冷めたら、必要に応じて非ステロイド消炎外用剤や副腎皮質ステロイド外用剤を使用します。日焼けした肌は水分が蒸発しやすいため、保湿剤を使用するのもよいでしょう。
市販されている薬剤や保湿剤には、皮膚を刺激する成分が配合されている場合もあります。個人差はありますが、強い刺激を感じる恐れもあるため、使用の際は十分に注意しましょう。また、発熱や悪寒、脱力など症状の悪化が見受けられる場合には、すぐに皮膚科を受診しましょう。

予防法は?

日常生活において紫外線を完全に遮断するのは非常に困難です。次の点に注意して、紫外線を極力防ぐよう心掛けましょう。

  • 日焼け止めを上手に使用して
    日常生活において日焼け止めを上手に使用し、日焼けを予防しましょう。
    日焼け止めは、乳液やクリームなどに紫外線防止剤が配合されています。紫外線防止剤は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2つに分かれます。前者は皮膚に塗った時に白くなりませんが、アレルギー反応が起こる可能性があり、後者は多少白くなりますが、アレルギー反応はほとんど起こりません。皮膚が敏感な場合は、紫外線吸収剤無配合のものを選ぶとよいでしょう。
    日焼け止めの防止効果は、SPF(Sun Protection Factor)(※1)とPA(Protection Grade Of UV-A)(※2)で表されます。防止効果の高い日焼け止めは、肌の乾燥やかぶれなどをもたらす場合もあるため、使用状況に合わせて選びましょう。
    ※1 SPF・・・主にB波の防止効果を数値で表し、数値が大きくなるほど高い効果が期待できる
    ※2 PA・・・A波の防止効果を3段階(PA+、PA++、PA+++)で表す。+の数が多いほど防止効果が高い
  • 日差しの強い時間帯の外出をなるべく避けて
    真夏の日差しの強い時間帯には、なるべく外出するのを避けましょう。外出する際には、大きなつばのついた帽子や日傘などで紫外線を防ぐことが大切です。長袖などの身体を覆う服装、サングラスや紫外線(UV)カット機能を備えた眼鏡の着用も有効です。紫外線は薄い雲を透過し空気中で散乱するため、曇りの日にも油断は禁物。また、地面や水面などに反射した紫外線にも留意しましょう。

虫刺され(虫刺症)とは?

 蚊やブユなどに刺される虫刺され(虫刺症)は、5~10月によくみられます。特に夏は肌の露出度も高く、虫の生息地である草木が繁殖することから、よく見受けられる傾向にあります。

症状と原因は?

03虫刺されでは、主に痛みや皮膚の痒み、発赤(※)などの症状が現れます。虫に刺されて毒成分や唾液腺物質が皮膚に注入されると、その刺激により痛みを感じたり、アレルギー反応を起こして痒みを生じたりします。アレルギー反応には、反応がすぐに現れて数時間で治まる即時型反応と、1~2日後に現れて治まるのに数日間を要する遅延型反応があります。これらの反応は、体質や虫に刺された頻度により個人差がみられます。
虫刺されの症状は虫の種類によって異なります。それぞれについてみていきましょう。
※発赤・・・小さく赤い発疹

さまざまな虫刺されの症状と原因
主に草木の茂る場所に生息。露出された皮膚を刺して血を吸う。刺されると発赤や痒みなどの症状が現れ、痒みが長引いて掻破(そうは)を繰り返すと、とびひ(※1)を生じる恐れもある。
ハチ 主に山林などに生息。露出された皮膚を刺して毒成分を注入する。初めて刺された場合には、患部が赤く腫れて激しい痛みを伴うが、ほぼ1日で症状は治まる。2回目以降になると毒成分に対するアレルギー反応が加わり、蕁麻疹(じんましん)や強い発赤などが現れることもある。重症になるとアナフィラキシーショック(※2)に陥る恐れもある。
ブユ 主に高原や山間部などの渓流沿いに生息。朝夕にさかんに活動し、露出された皮膚を刺して血を吸う。刺されると、半日~2日後に患部が赤く腫れて痒みが生じる。痒みが長引いて掻破を繰り返すと、赤いしこりとなって残る場合もある。
ケムシ チョウやガの幼虫であり、主に樹木に生息。有毒毛(※3)のあるケムシに触れて皮膚に毛が刺さると、激しい痒みや痛みを生じたり発赤が多発したりする。そのほとんどは約1~2時間で治まるが、再び赤く腫れて痒みを生じるケースも見受けられる。また、掻破すると発赤が増加する恐れもある。

※1 とびひ・・・細菌による皮膚の感染症。水泡を掻破した手で触ると、その部位に感染する
※2 アナフィラキシーショック・・・抗原(アレルギーの原因となる物質)が体内に入って、呼吸困難や血圧低下などのショック症状が現れた状態。重症になると死亡する場合もある
※3 有毒毛・・・毒針毛(どくしんもう)と毒棘(どくきょく)の2つに分かれる。ケムシに密生している微細な毛で、毒を有している

応急処置と治療法は?

まずは患部を洗浄してから冷やし、ステロイド外用薬を塗布します。必要に応じて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の塗布、または経口ステロイドを短期間内服します。いずれも医師や薬剤師に相談した上で使用することが大切です。
さらに、ハチに刺されたりケムシに触れたりした場合は、安全な場所に避難し、ポイズンリムーバー(※)などで毒針や毒液、有毒毛を取り除きます。皮膚の表面に吸い出された毒液などをよく泡立てた石鹸で洗い流してから、薬を塗布します。セロハンテープやピンセットなどの使用も有効です。
ハチに刺されてアナフィラキシーショックの疑いがみられたら、速やかに救急車を要請しましょう。アナフィラキシーショックの既往がある場合には、アドレナリン自己注射薬を携帯するとよいでしょう。注射薬の携帯は保険適用外であり、講習を受けた登録医による処方箋が必要です。また、この注射薬は応急処置であるため、使用後には必ず医療機関を受診しましょう。
※ ポイズンリムーバー・・・注射器のような構造で毒針や毒液、有毒毛を吸引する。小さくて軽く、片手で使用可能。アウトドアショップなどで購入できる

予防法は?

自然との共存の中では虫刺されを完全に防ぐことはできませんが、次の点に注意すれば予防するのも可能です。正しい予防法を身に付け、屋外でのレジャーを楽しみましょう。

  • 服装や飲食物などに十分注意して
    肌を露出する服装は避けましょう。また、虫は黒などの濃い色に集まる習性があるため、白などの薄い色の服装がお勧めです。香水やヘアスプレーなどのにおいは、ハチを刺激する恐れがあるため、使用を避けた方がよいでしょう。
  • 虫除け剤を活用して
    虫除け剤を上手に活用しましょう。しかし、虫除け剤の主成分であるジエチルトルアミドは、まれに神経障害や皮膚炎をもたらす恐れもあり、特に乳幼児への使用には注意する必要があります。

アレルギー性鼻炎といわれたら(2019.12.12更新)


監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授

「通年性」と「季節性」のアレルギー性鼻炎

im_001風邪をひいたわけでもないのに「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」に悩まされ、集中力が落ちて日々の仕事にも差し支える、そんな人の多くが病院へ行くと「アレルギー性鼻炎」といわれます。
アレルギー性鼻炎は、年間を通して起こる「通年性」と一定の季節に限って起こる「季節性」の2種類に分けられます。
「通年性」の主な原因はハウスダストですが、中でも多いのはダニです。ダニ以外の原因には猫や犬などのペットが知られています。
「季節性」のほとんどはスギやヒノキ、ブタクサなどの花粉が原因です。

鼻炎は体の防御反応?

ハウスダストやスギ花粉など、アレルギーを起こす原因物質を「アレルゲン」といいます。
アレルゲンが鼻に入ると、アレルゲンの侵入を防ぐかのように鼻がつまります。また、くしゃみや鼻水という症状でアレルゲンを体の外に追い出します。
このように、アレルギー性鼻炎は体にアレルゲンが入らないようにする一種の防御反応として起こっていると考えられます。

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症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまり

アレルギー性鼻炎の症状は、1日に何度も繰り返すくしゃみと、水のように流れる鼻水、鼻づまりが特徴です。
これらの症状は、鼻の粘膜に存在する肥満細胞と呼ばれる細胞から、ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンという化学伝達物質が放出されることで起こります。
ヒスタミンは鼻の神経を刺激してくしゃみ・鼻水に、またロイコトリエンやトロンボキサンなどは血管を刺激して鼻づまりに関係していると考えられています。

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検査

検査は、まず鼻炎の症状がアレルギー性かどうかを調べます。

検査には問診鼻鏡検査血液・鼻汁好酸球(びじゅうこうさんきゅう)検査などがあります。
また、アレルギー性であれば何が原因になっているかを検査します。
検査には、皮膚テスト、血清特異的IgE抗体検査、鼻粘膜誘発検査などがあります。
血清特異的IgE抗体検査は、採血をしてアレルギーと関係するIgEという抗体がどんな種類のアレルゲンと結びつくかを調べるものです。
スギ花粉がアレルゲンであればスギ花粉に対し「陽性」というように結果が出ますが、陽性だからといって必ずそれがアレルゲンとは限らない場合があり、問診で得られた情報などと組み合わせて診断します。

問診 鼻鏡検査
問診では、症状が始まった時期、季節との関連性、症状の種類と程度、過去の病歴や他のアレルギー性の病気(喘息、アトピー性皮膚炎)の併発の有無、家族の病歴(特にアレルギー)などを明らかにしていきます。 耳鼻咽喉科を受診すると、専用のスコープを使って直接鼻の粘膜の状態を観察する鼻鏡検査を行います。通年性のアレルギー性鼻炎では、鼻の粘膜が全体的に腫れあがって白っぽく見え、透明の鼻水がみられます。また、副鼻腔炎、鼻ポリープなど他の病気があるかどうかも観察します。

診断

アレルギー性鼻炎では、白血球の一種の好酸球という細胞が血液中や鼻水の中に増加します。したがって、鼻汁好酸球検査で鼻水の中の好酸球増加がみられることがポイントになります。
また、症状の原因となるアレルゲンが証明されれば確定診断となります。原因となるアレルゲンを明らかにすることは、治療や生活環境を整える上で重要です。

治療

治療目標の第一は「症状はあってもごく軽く、日常生活に支障がない。薬もあまり必要としない状態」に持っていくことです。
この目標を達成する治療には、薬物療法、特異的免疫療法(減感作療法)、手術療法、アレルゲンの除去と回避があります。
治療薬を選ぶためには、「くしゃみ・鼻水型」「鼻づまり型」といった鼻炎のタイプを区別し、重症度を判定することが必要です。

問診でわかる重症度の基準
  軽症 中等度 重症
くしゃみ・鼻水タイプ
1日のうちでくしゃみの回数、もしくは鼻をかむ回数の多いほうで判断します
5回未満/日 5回以上/日 10回以上/日
鼻づまりタイプ
1日のうちで口呼吸をする割合を参考にします
口呼吸を必要としないが鼻づまりを少し感じる  時々口呼吸を必要とし、鼻づまりも強い 頻繁に口呼吸を必要とし、鼻づまりも非常に強い

薬物療法

アレルギー性鼻炎の薬物治療では、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサン薬、ステロイド点鼻薬などを鼻炎のタイプや重症度に合わせて使い分けます。

アレルギー性鼻炎の治療薬
軽症 抗ヒスタミン薬または抗アレルギー薬
中等度 くしゃみ・鼻水型
  1. 抗ヒスタミン薬
  2. 抗アレルギー薬
    ステロイド点鼻薬
    (このうち1つ)
*必要に応じて〔1〕または〔2〕に点鼻薬を併用
鼻づまり型
  1. 抗ロイコトリエン薬
  2.  抗トロンボキサン薬
    ステロイド点鼻薬
    (このうち1つ)
重症 くしゃみ・鼻水型 ステロイド点鼻薬と抗ヒスタミン薬
鼻づまり型 ステロイド点鼻薬と抗ロイコトリエン薬または抗トロンボキサン薬

特異的免疫療法(減感作療法)

原因となるアレルゲンのエキスを薄い濃度から少しずつ注射し、体をアレルゲンに慣らしてアレルギー反応が起こりにくくなることを期待する治療法です。
数年間という長期の治療になりますが、完治することもあります。

手術療法

レーザー手術、電気凝固法、凍結手術などがあります。
高度なアレルギーでは、粘膜を切除する手術や鼻腔の通気を改善する手術、鼻水を止める神経切除術などがあります。

アレルゲンの除去と回避のポイント

日常生活の中で、鼻に入るアレルゲンの量を減らすことができます。アレルゲンの量を減らすことは、鼻炎の症状を軽くする効果があります。
アレルゲンの除去と回避について、日本アレルギー学会の「ガイドライン―鼻アレルギー」ですすめている方法があります。

室内ダニの除去

ハウスダストが原因となる場合、その大部分は室内ダニです。室内ダニが生息しにくい清潔な環境をつくることがアレルゲンの除去になります。

  • im_004室内の掃除では、吸入したダニを再びまき散らさないように、排気循環式の掃除機を使うようにします。
    1回20秒/m2の時間をかけ(6畳の場合は3分30秒弱になります)週2回以上掃除します。
  • ソファー、カーペットなどの敷物や畳はダニが生息しやすいので避け、フローリングにします。
  • ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないようなカバーをかけるようにします。
  • 部屋の湿度を50%、室温を摂氏20~25度に保つようにします。
スギ花粉の回避

スギ花粉がアレルゲンの場合、花粉情報に注意し、飛散の多い時期はできるだけ外出を控えます。

  • 外気を入れないように窓や戸を閉めるようにします。
  • 外出時には花粉防御用のマスクや眼鏡を使います。また、表面が突起した毛織物のコートなどはなるべく着用せず、帰宅時は衣服や髪から花粉を払い落とします。入室したら、手洗い、うがい、洗顔をして鼻もかむようにします。
ペットとアレルゲン対策

im_005ペットはできれば飼育をやめたほうがよいのですが、次善の方法として犬なら屋外で飼育することや、猫であれば寝室には入れないことが重要です。

  • ペットと、飼育環境を清潔に保ちます。
  • 通気をよくし、掃除をしっかり行います。

ピロリ菌から胃潰瘍に?(2019.12.12更新)

監修/北村 聖
東京大学医学教育国際協力研究センター 教授


胃と胃潰瘍の関係

im_001胃は食べ物を消化し、栄養を吸収しやすい状態にして小腸に送り出します。
このため、胃壁(いへき)から塩酸と同じくらい強い酸である胃酸が分泌され、消化活動を行います。また、胃酸は食べ物と一緒に入ってきた細菌や微生物などを死滅させ、胃の中で腐敗が起こらないようにする働きもしています。
胃壁からは、胃酸と同時に胃粘液も分泌されます。胃粘液には消化力の強い胃酸が直接胃粘膜に触れて損傷を与えないようなバリアー機能があります。

胃粘膜の修復ができなくなると・・・

im_002健康な胃では、少しくらいの損傷は周囲の細胞がたちどころに増殖して胃粘膜を修復します。しかし、何らかの原因で修復が間に合わないと、胃酸による消化が進み、胃壁の組織が失われた結果、「胃潰瘍」といわれる状態になります。
この原因には、ヘリコバクター・ピロリ菌による慢性胃炎や鎮痛薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、ストレスなどが知られています。
ヘリコバクター・ピロリ菌は、アンモニアや毒素を作り出して胃粘膜を直接損傷することがわかっています。

胃粘膜の修復は、胃粘膜を流れる血液が鍵

胃粘膜には、消化に必要な血液を供給するためにたくさんの毛細血管が走行しています。胃粘膜の細胞が損傷しても、この血液が十分にあると修復に必要な栄養や酸素を確保できます。また、血流は胃壁の修復力を高める働きもしています。ところが、ストレスや鎮痛薬は、胃粘膜の血管を収縮させ血液量の不足を招き、修復力を低下させます。

症状が現れる場合は

症状の現れかたから、急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍に分ける場合があります。
症状には、みぞおちなど腹部の痛み、背中の痛み、腹部の不快感、むねやけや吐き気などがあります。空腹時や食後、少し時間がたってから痛みが起こる場合が多く、軽い食事の後は痛みがなくなる傾向があるといわれます。
潰瘍で胃壁の血管が傷つき、出血しているような状態では、吐血やタール状の黒い便がみられることもあります。
一方、まったく自覚症状はなく、人間ドックなどで偶然発見される場合もあります。
また、胃潰瘍の70~90%でヘリコバクター・ピロリ菌の感染がみられます。

主な検査

X線造影検査

バリウムを飲んでレントゲン撮影する検査です。
潰瘍の形や周囲の胃粘膜および胃壁の状態を観察します。

内視鏡検査

胃カメラで直接、潰瘍の状態を観察して病気の進み具合を判定します。
また、生検(せいけん)といって内視鏡の先端に付属した器具で組織の一部を採取し、癌の有無を確認する場合があります。

ヘリコバクター・ピロリ菌に対する検査

ピロリ菌の検査には、内視鏡検査の必要な「迅速ウレアーゼ試験」「鏡検法」「培養法」、と内視鏡検査を必要としない「尿素呼気検査」「血清・尿中抗体測定法」があります。

進行度の分類

胃壁は、内側から「粘膜層」「粘膜下層」「固有筋層」「しょう膜下層」「しょう膜」と5層にわけることができます。粘膜内までの浅い潰瘍は、びらんといわれます

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  • 急性胃潰瘍は、出血をともなった粘膜下層までの浅い潰瘍が多く、びらんの多発もみられます。
  • 慢性胃潰瘍は、40歳~50歳代に多く、単独で円形の潰瘍となる傾向がみられます。

治療

治療は、薬物療法、手術やヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法などがあります。

薬物療法

薬物療法では、主に胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬などを使用します。

胃酸分泌抑制薬 胃酸の分泌を抑える薬です。ヒスタミンH2受容体拮抗薬(シメチジン、ファモチジン他)、プロトンポンプ阻害薬(ランソプラゾール、オメプラゾール他)などがあります。
胃粘膜保護薬 胃粘膜を保護して胃粘膜の修復力を高める薬です。スクラルファート、レバミピドなどがあります。

手術

胃潰瘍で血管が損傷し出血しているような場合は、内視鏡の先端に付属した小さなクリップで血管を止血する内視鏡的止血法が行われます。

ヘリコバクター・ピロリ菌に対する除菌療法

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると、胃潰瘍の再発を繰り返すことが知られています。検査の結果、陽性であれば2種類の抗生物質と胃酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌療法を行います。除菌療法の副作用は、抗生物質による下痢が主なもので、軟便、皮疹、味覚異常、食欲不振などもみられます。
除菌終了後4週間以上経過した時点で、除菌の成果を調べるため、再び検査を行います。成功率は、80%といわれています。除菌療法に成功すると、ほとんどの患者さんで胃潰瘍の再発はみられません。
除菌療法についてさらに詳しいことは、医師にご相談ください。

原因の除去

ストレスや薬物など、原因がはっきりしている場合は原因を除去することが大切です。

治療のポイント

胃潰瘍を治療する上で大事なことは、薬剤の服用を医師から指示されたとおりに守ることです。薬剤の効果で治療開始後の早い時期に症状は治まりますが、潰瘍が治ったわけではありません。医師から指示された期間、必ず薬剤の服用を続けることが治療のポイントになります。

生活習慣の改善

im_004胃潰瘍では、過労やストレスを避けることが大切です。
酒、禁煙はもとより、胃酸の分泌を促すような食事(コーヒー、濃いお茶や紅茶、焼肉、強い香辛料などの刺激物)は控え、規則正しい食生活を心がけます。
そして消化のため、十分な血液が胃に送られるように食後30分くらいは体を動かさないようにすると良いでしょう。

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